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特集・コラム

【7月のハウジング・コラム】
家づくりは人づくり 
〜若手大工を育成する工務店の今と未来〜

2020年6月22日

 熟練工の高齢化で、匠(たくみ)の技を受け継ぐ大工の確保が難しい時代。かごしま材を使った在来軸組工法を得意とする地元工務店として、自社で若手大工の育成に取り組んでいる鹿児島市の建築工房匠に、ここ5年間の歩みを聞いてみました。

「親方の亡き後、やる気はあっても現場を回せる大工が不足していました」

 建築工房匠代表取締役社長の福迫健さんが社内大工育成を始めたきっかけは、大工の高齢化でした。「木構造を造る上で、大工の占める仕事の割合はとても大きいんです。だから、仕事はあるのに、大工不足で現場の数をこなせない。官公庁の工事入札が不調に終わる一因にも、現場を回せないという現実が見え隠れします」

大工不足は、ただ1社だけの問題ではない

 5年前、匠では、複数の現場を2つの大工グループが分担していました。「1グループ3人構成でしたが、片方のグループの親方が亡くなった後、すぐに後継者が見つからず、やる気はあっても徐々に現場が回らなくなってしまいました」。「1人減った分の作業を、みんなで協力してこなしていくだけのゆとりがなくなっていたんです。次の現場がやってくるのに、このままではお客様との約束が守れない…」。そこで、焦った挙げ句、福迫さんが決断したのが、自社で大工を社員として抱えるということ。年配の熟練工がいるうちに、若手の大工を育てるという、ある意味、賭けでした。「果たして、みんなを雇い続けることができるだろうか?」。大工不足は、ただ1社だけの問題ではなく、すでに全国的な不足が目に見えてきたころでした。

若手が欲しい、でも現実は厳しい

大工を希望する「成りたがり」はいるけれど、「適正があるか」は別問題。契約社員に応募はあったものの、「動機がしっかりしていないと、続かないんです」と福迫さん。辞めていく若い子がいる中で、訓練校の生徒を2人同時に雇ったのが4年ほど前。「1年目は様子見です。でも、少しずつ仕事が分かってきて、定着してくれました。今では20代の若手が4人います。うち3人はまだ見習いですが。現場監督をはじめ若い大工が5、6人いれば、屋根の上の高所作業などの建て方工事を任せられます。70代の熟練工には足場のいい内部の造作を任せられるので、手分けすることで作業効率が上がります」

若手は戦略に貢献、独立してもワンチームで現場をシェア!

「実は、若い大工をそろえると、仕事が入ってくるというメリットがあるんです」と戦略的な見方をする福迫さん。「自社の大工工事はもちろんですが、他から大工工事を請け負うこともできます。若者がワンチームとして動けば、ゆくゆく独立しても現場ごとに集まってワンチームとして仕事ができるからです」。今様に言えば、現場をシェアするということのよう。「そのためには、多能工的な動きができるようになる必要がある」そう。「例えば、リフォーム現場では、大工工事のほかに水道・電気・クロスなどもできると、会社としては現場監理が任せられます。グループLINEを活用して、写真をやり取りし、電話で作業指示や報告がやり取りできれば、会社としてもプラスになる」。「大工しかできません、ではなく、多能工的な動きをすることで、会社としても福利厚生を手厚くすることができます」。

地域の模範になる仕事のできる大工に

テレワークではなく、現場でものを造ってはじめて成り立つ大工の世界。「若手は、年配者よりもいい仕事をしようという意識を持って、それこそ断熱材の施工も1ミリ単位で腕を競っています。目に見えない下地部分だからといって手を抜かず、仕様書を守って仕事していけば、自然といいものになるんです」と声を弾ませる福迫さん。プレカット工場の片隅で、ノミを動かす若者の姿に、「自信を持って手加工のできる大工になってほしいです。そんな大工のいる工務店にしていきたいですよね。御楼門の屋根裏のくぎ打ちもみんなでボランティア参加したんですが、自分のした仕事を誇りに思える、地域の模範になるような仕事ができる大工を目指してほしいです」と若手に大きな期待を寄せます。

 

建築工房 匠
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