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人生100年時代の住まい方 〜快適に住み継ぐためのヒント〜Vol.3

2020年8月17日
※本特集は「幸せな家づくり」2020Spring・Summerに掲載された巻頭特集を再録したものです
住宅の平均築後年数がイギリス77年、アメリカ55年に対し、日本は30年といわれます。できれば、「いいものを造り、きちんと手入れをして長く大切に使う」│そんな、ストック活用型社会を迎える中、快適に住み継ぐためのヒントを、建築に携わる5人の専門家に聞きました。これからの住まい方の参考にしてみませんか。

▲プラスディー設計室 室長 川畠 康文さん

「愛着が持てないと、住み継げない」
家が資産になるように
施工品質が高く、心地よい家を造ろう

建築設計とまちづくりを並行しているプラスディー設計室の川畠康文さん。「家は、居心地の良さが重要だと思います。(性能表示の)数値だけではない部分。デザインも大事だけど、雰囲気や心地よさ。性能は良くても長く住みたいかどうか。それは愛着が持てるかどうかです」とシンプルな答え。

◆提案力とチェック体制

「設計で大切にしていることは、ヒアリングを通して、建主が言葉にできていない本当に望んでいる住まいを提案すること。そして、完成度を高くし、施工品質を保つには、施工者とは別部隊の設計士が監理していく必要があります。あいまいになっては目に見えない部分の完成度が落ちるからです」
 設計監理事務所を立ち上げて13年。断熱材の施工技術が鹿児島は低いと思う川畠さん。
「中途半端な施工では、壁内結露が起きます。施工者側の意識が問題だと思います。高気密・高断熱になるほどしっかりしないと結露します。壁内結露で木が腐り、建物の寿命を縮めます」

◆結露は気温と水蒸気量が関係

そこで、川畠さんが解説してくれたのが、飽和水蒸気量と結露の関係。「ビールのコップと同じで、乾燥していると水滴は付かないけれど、露点を超えると、周りにある空気中の水蒸気が水滴となってコップの表面に現れる、という現象です」
壁の中でも同じことが起こるので、断熱材がしっかり入っていることと、防湿層が隙間なく施工されていることが重要になるといいます。
「他にも、構造上必要な金物の施工がしっかりしてあるかなど、数値に出ない部分をチェックする体制が必要なんです。これからの時代、高気密・高断熱のグレードが資産価値に影響します。健康寿命に差が出てくるでしょう。アトピーやアレルギーの発生率、年間1万7000人ともいわれるヒートショックによる死亡率とも関係してきます」

【施工例1】

▲敷地の形状と周囲の環境から導き出された60度折れ曲がったプランニングの住まい

▲2階の家族の遊び場+勉強の場でもあるファミリールームに面した吹き抜けを通して、高窓から光が入るとともに、通風も確保。

▲コーナー窓から取り込む中庭、造作のアイランドキッチ ン、畳コーナーに書斎など、変化に富んだLDKとなっています。

【施工例2】

▲5つのレベル差をもつスキップフロア住宅。パッシブデザインを取り入れ、全ての部屋が日差しの降り注ぐ吹き抜けに面してプランニング。1階はリビングとキッチンを装飾窓で柔らかに仕切りつつ広々とした空間に。

▲外観は東西から見ると家型、南北から見ると方型のシンプルなデザインに

photo by 石井紀久(blitz STUDIO)

キーワードで見る住まいの知識

◆「飽和水蒸気量」
飽和水蒸気量とは、1㎥の空気中に含むことができる最大の水蒸気量をいいます。

◆「露点」
空気中にある水蒸気が冷えて凝結を始める時の温度をいいます。

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