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住宅建築で今、自然の要素を上手に取り入れたパッシブデザインの考えが広まっていま
す。室内に入る太陽の日差し。風の抜け方。外(庭)との関係性。室内の湿度・気温と関係する自然条件を検討し、どこに居ると心地よいかを探り、設計に反映するものです。
「間取りのバランス。3次元的な風の流れ。温度差換気には、高窓が有効です。ただし、鹿児島ではオーバーヒートに注意が必要。庇(ひさし)による日射のコントロール。周りとの関係性を考えるプランニング。立体的空間のパッシブコントロールが大切になってきます」
川畠さんは、全体の造り方が快適性を大きく左右するといいます。「最初に数値だけじゃないと言いましたが、数値としてしっかり造るのは基本のキなんです。その上で、デザイン、使いやすさ、設備、断熱、構造、コスト、メンテナンス性のバランスをとるのが、設計の要です」
「土地探しのポイントは、一生住みたくなるエリアか?という点です。土地の形や周りに高いビルがあるところは設計力でなんとかなります。まずは、こういうところに住みたいと思えるエリアを探すことです。近所付き合い、買い物、公園など、周りの環境に目を向けることが大事です。なぜなら、これらは設計力では変えられない部分だからです」
川畠さんが今取り組んでいるのが、規格型住宅「EN HOUSE(エンハウス)」です。
「間仕切りのない自由な大空間。33畳ワンルームを基本プランとし、可変性を持たせています。箱(器)としての性能を上げ、家庭菜園もできるような庭をセットにします。平屋の魅力をローコストで。ZEH(ゼッチ)より上の断熱性能G2(ジーツー)グレードを確保し、毎日を楽しむ心地よい暮らしを提案できればと考えています」
「結果的には、満足して住めるかどうかです。愛着を持って住み続けられるか。愛着があればメンテナンスもしていくはずです。性能だけじゃない住みやすさ。好きなデザインも大事ですけどね。それぞれの建築設計事務所には得意とする設計があるので、自分たちの価値観を共有できる設計者に頼むことが重要だと思います」と川畠さん。
建てた家、または購入した家が資産になるか、それとも負債になるか。「貸す、売るときの住宅の価値を考えてみるといいですね。築100年の古民家が魅力的なのは、歴史を刻んできたという付加価値があるからだと思います。日本の家屋の平均寿命が短いのは、気候的なこともあるけれど、建物を資産として捉え切れていないことが理由かもしれません。いつかは家を譲るときが来ます。その時、継ぐか、壊すか、売るか、貸すかしかないわけです。ライフサイクルコストを長い目で考えるといいですね。メンテナンスフリーを重要視し過ぎると、逆に住宅の寿命を縮めると思います」
photo by 中西雅人(studio folk)